英語ことはじめ

日本人はなぜ英語が苦手なのか

近年来、日本人の英語下手の元凶として、学校英語教育が槍玉に挙がっています。特に学校英語の文法・翻訳中心の教育法は集中砲火を浴びており、巷では文法を無視した勉強法を謳った書籍がベストセラーになったりしています。 果たして、日本人の英語下手の元凶は学校英語教育にあるのでしょうか。

英語下手は日本だけ?

日本人の英語能力の低さを説明する際、よく引用されるのがTOEFLの国別平均スコアです。このテストで日本は最下位付近のポジションをキープしております。この原因を日本の英語教育に帰するのが常となっているようです。

しかし、ここには大きな落とし穴があります。

それは、必ずしもTOEFLの平均スコアが、当該国家総体の英語能力を表している訳ではないのです。TOEFLは北米の大学に留学する際に必要となるもので、この試験を受ける人は限られています。加えて、受験料が高い(130 USドル)ので、途上国の人でTOEFLを受ける人は、いわゆるエリートだったり、英語圏への留学を予定している優秀な人たちに限られてきます。

一方、経済力のある日本人の場合は力試しで受ける人もいますので、途上国よりも幅の広い受験者層が存在しています。結果として平均スコアは低下する傾向があります。

独立を保った日本

アジア諸国で平均点の高い国(インド・シンガポール・フィリピン)に共通することとして、英米の植民地支配を経験していることが挙げられます。これらの国家は、現在も英語が公用語か、それに準ずる扱いを受けています。

英語能力において、これらの国が日本より高くなるのは当然です。ここから日本の英語公用化論という暴論が発生しています。英語公用化論については後日改めて言及したいと思います。

言葉にも種族がある!

日本人と英語を語る上で無視できないものに「語族」というものがあります。これは、それぞれの民族の言葉の共通性から分類したものですが、日本語は一般にアルタイ語族に属する(※注)と考えられており、英語とはかけ離れた所に位置する言語と分類されています。

実際、英語を勉強してみるとわかりますが、英語の文法構造は日本語とほとんど正反対になっています。日本人にとって、英語はもともと習得しにくい言語なのです。

一方、ゲルマン語系(ドイツ語・オランダ語・デンマーク語)やロマンス語系(フランス語・イタリア語・スペイン語など)の言語は、日本語より遥かに英語との共通点が多い言語であるとされています。

見ての通りヨーロッパに集中していますが、ヨーロッパ系の人が総じて日本人より英語が上手なのは言語学親近性によるところも大きいと考えられています。

学習している外国語と学習者の母国語との言語学的距離が外国語習得にどのような影響を及ぼすのかということを証明した調査があります。アメリカ国務省の付属機関が行ったもので、アメリカ人国務省研修生が日常会話に不自由しないスピーキング能力を習得するのにかかった時間を比較したものです。

調査では、フランス語・ドイツ語・スペイン語等のゲルマン語及びロマンス語系の場合約720時間で習得できたのに対し、日本語・中国語・朝鮮語・アラビア語では約2400時間から2760時間の特訓が必要だったとされています。

一方、日本の中学・高校の英語総授業時間数は約800時間だそうですので、日本人が英語を習得するには、時間が不足しているのは明白です。

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※注: アルタイ諸語を共通の祖語をもつアルタイ語族であるとする説は古くからあるが、3グループは数詞などの基礎語彙が全く違うため、少なくとも伝統的な比較言語学の手法によってアルタイ祖語を復元し、アルタイ語族の存在を証明することは困難であり、そもそもアルタイ語族というものは存在しないと考える言語学者も多い。母音調和以外の特徴を共通にする朝鮮語および日本語をアルタイ語族(アルタイ諸語)に加える見解もあるが、近縁関係は証明されていない。
(出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 ) もどる